総 評

温かみのある作品を

エッセイスト 澤口たまみ

 今年もみなさまの作品を、楽しみに読ませていただきました。最終選考に残った作品を一読して、岩手県外からの応募が多いことに驚きました。なかには華々しい受賞歴を持つ腕自慢の応募者もおり、審査も自ずと熱を帯びました。ただ、文章の巧みさもさることながら、内容の温かみを重視して審査していることは、マ・シェリミニエッセイ大賞が始まって以来、ずっと変わらずこだわり続けている姿勢です。
 また今年は、「マ・シェリHachinohe」をお読みのみなさんの応募が目立ちました。いずれも心のこもった作品で、八戸のみなさんが、マ・シェリミニエッセイ大賞に大きな関心を寄せておられることを、ひしひしと感じさせられる内容でした。全国から応募があるなか、それでも県内、八戸のみなさんの作品が複数入選しているのは、マ・シェリ紙面の温かみのある雰囲気をよく知っておられることが、作品を書くうえでヒントになったのだと思います。
 マ・シェリミニエッセイ大賞は、親しみやすく気軽に応募できる文学賞です。そしてそのことが、「書くこと」を日常の暮らしのなかで楽しんでいただく、大きなきっかけになればと考えております。



800字の小宇宙

日本現代詩歌文学館 主任学芸員 豊泉 豪

 例えば、雪のかけらや砂粒、こおろぎの羽、たんぽぽの綿毛、紙の切れ端といった、ごく小さくささやかなものでも、よく見るとそこに、全体とは違う色や形や大きさをした、細かい部分があることがわかります。そしてさらに、虫眼鏡や顕微鏡でミクロに向かって倍率をアップしていくと、視界には反対に、とてつもなく大きな世界が広がっていきます。私たちのいのちの一番小さな部分は、きっと、宇宙の姿とそっくり同じ形をしています。だから、心を研ぎ澄まし、小さなものに目を凝らすことは、涯(はて)のない宇宙の大きさを感じることと同じです。
 マ・シェリのミニエッセイは800字。もとより大河ドラマのように、あれもこれも描ききることはできません。しかし、誰もがふと抱くありふれた思いや、ちょっとした日々の出来事、あるいはずっと以前の個人的な体験に、じっと目を凝らし、心の焦点をグっと絞っていくと、そこには思いがけない世界が広がっていきます。あるときは温かく、甘酸っぱく、また切なく、やさしく、懐かしい。それはまぎれもなく800字の小宇宙です。
 今回初めて選考に携わらせていただきました。たくさんの小さな宇宙に出会うことができ、感謝しています。

 

 

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